物語中に登場する鉄道関係の用語のいくつかについて説明します。
【指差確認】第3話で、「出発進行」という声とともに車掌が行います。この「出発進行」というのは、運転手に向けての発車の掛け声ではなく、駅の出発信号機が進行(青)を示していることを、声に出して確認しているのだそうです。
【警報機のない踏切】第4話で、電車は警報機のない踏切を通過します。踏切には、かつては4種類あったそうです。一日中踏切番がいるのが第1種、自動警報機もなく「ふみきりちゅうい」の札だけが立っているのが第4種。この物語の中の踏切は、警報機もない小さなものなので、第4種ということになります。
【タブレット交換】第5話の穂風駅で、駅長さんと車掌との間で交わされるのが、タブレットの交換です。タブレットは通票とよばれるもので、だいたい直径10cm程度の金属の輪っかです。これは、単線の線路での電車の衝突を防ぐための、通票閉塞という安全システムのために使用されたものでした。タブレットは、その区間、他の電車が入ってこないようにする通票閉塞機を操作する鍵なのだそうです。自分の記憶でも、そう遠くない過去に、駅員さんと乗務員の人が、大きなリングを交換しているのを見た記憶があります。リングに取り付けられていた袋の中に、きっと丸いタブレットが入っていたのでしょう。タブレット自体を見た記憶はありません。
【シグナルの腕木】 第6話で、電車はシグナルの腕木が下がっているのを確認しながら、進行して行きます。この腕木とは、路線の各所に配置されている腕木信号機のことで、腕木が真横になっているときは停止、斜め下に下がっているときは、進行を合図します。宮沢賢治の童話「シグナルとシグナレス」では、恋する女性のために、“この腕木をずっと下げないでいてみせます”と情熱的にアプローチするシグナルが登場します。ただ、最近は、多くの路線で車内信号システムが整備されて、このような線路端の信号機は、非常に少なくなってしまっているようです。
【青い乗車券】 最後の第10話で、終着駅でただ一人、車内に残った少年が取り出すのが、青い乗車券です。少年は、遠い場所に旅立ってしまう友だちとの約束で、いっしょに駅を降りず、一人でまた、始発駅まで戻るつもりだったと思われます。ということは、往復乗車券ということになるのかもしれません。往復乗車券がかつて青色だった、というようなことはなく、まったくの創作ですが、乗車券一般については、昭和の初期まで、等級により色分けされていたそうです。1等は白か黄、2等は青、3等は赤で、2等というのは、いまでいうグリーン車のようなものだそうで、青色切符は、高級チケットだったようです。宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」では、ほんとうにいなくなってしまうカムパネルラの方は、ありふれた「小さな鼠色の切符」を出すのですが、結局、あとに残されることになるジョバンニの切符は、「四つに折ったはがきぐらいの大きさの緑色の紙」でした。旅を続けないジョバンニの方が、立派な切符を持っている、というのが象徴的です。偶然ではありますが、ワークの物語でも、旅立つことのない少年だけが、車掌に切符を示すことになりました。
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